「悪事千里を走る」
悪い行為は、瞬く間に噂が四方八方に広まっていく、という意味である。

まさにこの諺の通り、Josef Biffarと、その経営者の悪行は、もはやドイツ全土に知れ渡っていると言っても過言ではあるまい。
それもそのはず。
ただでさえ狭い、海外の日本人コミュニティ。少しでも変な噂が出ようものなら、その伝播はあっという間だ。
さらにその中で、飲食業界と言えば、人の入れ替わりが激しいのが世の常。
入れ替わりが激しい、すなわち人の移動が多いわけで、今日もいたるところで、「自分の前の職場は〇〇だった」「あの人が今度行くところは×××らしい」などの “情報交換” が絶えず行われている。

実際に、Josef Biffarはどれほど有名なのか。
具体例を挙げていこう。


● 70里先の弁護士も知る悪評

一連のJosef Biffarによる不当解雇、賃金未払い等の不正行為について、筆者は少なくとも3件の弁護士事務所に相談した。
一つは、まさに地元の弁護士事務所。
二つ目は、ダイデスハイムからは約30km離れたハイデルベルグに事務所を構える弁護士。
そして、三つ目は、ダイデスハイムから約270km離れたデュッセルドルフの弁護士事務所だ。

地元の弁護士は、
もはや説明が要らないほどJosef Biffarの悪評を知っていた

二つ目の弁護士は、訳あってJosef Biffarとその社長・徳岡史子の過去の行為の一部を知っていた人物である。
なぜ、知っているのか、その詳しい経緯をここでは記さないが、とにもかくにもハイデルベルグでもJosef Biffarの噂は広まっていたのである。

しかし
驚いたのは、三つ目のデュッセルドルフの弁護士事務所(以下、E弁)にも知られていたことである。
デュッセルドルフと言えば、欧州に限らず世界的にも有数の日本人街を擁する都市であり、日本語対応が可能な弁護士、翻訳士、医者、不動産屋、商社…などがある。
当初相談したE弁も、ドイツ国内に住む日本人なら一度は耳にしたことがあるであろう有名事務所であり、日本語で相談できるとのことで、かなりの遠方ながら連絡をとってみたのである。

筆者「〇〇〇、×××ということで、どうにかなりませんか」
E弁「わかりました、調査してみます。ところで、どちらにお住まいですか?」
筆者「ラインラント=プファルツ州のダイデスハイムです」
E弁「ダイデスハイム・・・?というと、もしかして、えーーっと名前なんでしたっけ・・・お勤め先はなんという会社ですか?」
筆者「Josef Biffar、レストランfumiです」
E弁「ああ、そう!Josef Biffarですね。知ってますよ
筆者「え!?知ってる?」
E弁「はい、以前もそちらに勤めていたという方が何人か相談に来られました。過去にも同じようなことで調べたことがあります。」

結果からいえば、筆者については、E弁に何かしら具体的な手続きを取ってもらうことはなかった。
しかし、誰かは知らないが、過去に筆者と同じく、Josef Biffarに賃金未払い等の違反行為を受けた複数の日本人が、同じように拠り所としてE弁に相談していたのだ。
このようにして、Josef Biffarの
賃金ピンハネ体質等は、実に約270km(≒70里)先まで、その名を轟かせていたのである。


● 転職先にも “元fumi” が

Josef Biffarの名前は、日本人が多く住むデュッセルドルフだけに限らず、遠くミュンヘンやベルリンにも知られているという。
これは、複数の人からの証言を元にしている。

すでにほかの記事でも紹介したように、同社はほぼ常に求人を出している。
理由は、人がすぐに辞める、定着しないからだ。
だから、その求人を見た、実際に応募した、という人と数多く出会うことがある。
面接した人で、
 「面接はしたが、対応が嫌な感じだったのでやめた」
 「社長と会って話をしたが、直観的に合わないと思った」
などといった人がいた。
また、応募はしなかったものの、
 「同僚らと求人を見て、よくない噂を耳にした」
 「残業手当として、金銭ではなく無理やり自社ワインを押し付けられて、誤魔化されるという話を聞いた」
などの証言もあった。

果てには、ダイデスハイムから約480km離れたベルリンで働いた経験のある人が、「ベルリンでも、あまり評判のよくない日本人経営のワイン蔵があるという噂は聞いた」とも話していた。
ベルリンよりもダイデスハイムに近いが、やはり大都市のミュンヘンでも、そうした噂は飛び交っていたという。
なぜ、それほどまでに噂が広まっているかと言えば、それは、Josef Biffarが毎年多くの人を採っては辞め、採っては辞めを繰り返しているからに他ならない。
だから、ドイツ国内で転職し、他の飲食店に採用された際、そこにたまたま “元fumi” の人間がいた、というパターンも幾度か聞いた話である。


● 町民に広がるウワサ

ここまで悪評が広まっている組織である。
当のダイデスハイム町内においても、それは留まるところを知らない。
筆者が入社するよりも数年前の話だが、元fumi従業員の日本人が突如社宅から追い出されて他都市へ移っていったというエピソードを、とあるご近所さんが教えてくれた。
なお、この証言をした人物は、当該の日本人といまだにSNSで繋がっており、かなり真実性の高い話であると思われる。
その後、筆者が渡独した直後の当時の料理長の件、そして我が家の件と続き、町内の幼稚園や小学校関係者の間でも悪評は広まっている。

そのほか、徳岡史子が先代のBiffar家からワイン蔵を買い取った際のウワサ、町内のワイン蔵が集う協同組合に入らないといったウワサ、従業員たちとの度重なるトラブルのウワサ…etc
などなど、Josef Biffarの悪い噂を知っている地元住民は相当数存在していた。


● 井戸端会議でも話題の的に

前述の弁護士の話にも出てきたが、ハイデルベルグという町がある
14世紀後半にドイツ最古の大学が設立された古都で、いまだに多くの学生が世界中から集う。
日本人居住者も多く、そのため、この町には日本
補習校もあるのだ。

その補習校でも、Josef Biffarの評判は届いており、ウワサ好きなお母さん方の中でも、ホットな話題の一つになっているという。
このハイデルベルグには、レストランfumiの支店があったが、この支店は2018年8月に予告なく突然閉鎖。
また、元従業員で子どもをこの補習校に通わせていた者もいたため、多くの補習校関係者が、その評判に関心を持っていた
ということだ。