「家族がいて食えないようにしたのは誰なんだと。だったら雇うなよ。最低保証くらいしろよ。」

 関西の某大手芸能事務所の不祥事に対する、とあるコメディアンのコメントである。

 このコメント。
 まさに、このJosef Biffarに対しても当てはまる。

 Josef Biffarは、求人情報で「ご家族での応募歓迎」としておきながら、家族で移住しようとした社員に対して何の保証もせず、さらにはどうすれば家族同伴で移住できるかの下調べすらしていなかったと断言できよう。

 実際、家族同伴で渡航し、当然ながら家族とともにドイツ生活を送るつもりでいた社員に対して、Josef Biffarは以下のような扱いをした。

● Josef Biffarが支払う給料は、扶養家族がいる者にとっては、ドイツ政府が定める公的扶助(いわゆる生活保護のようなもの)の対象になるほど低かった。そのため、一般賃貸物件の申し込みや、訴訟のための弁護士費用・裁判費用などが一部または全額免除されるほどであった。

● 世帯収入が規定未満の場合、家族の滞在許可(ビザ)は発効されない。これの申請が却下された際、社長は、いともあっさり「ご家族は帰国されてはいかがですか」と提案した

● 後に、当時のそうした状況を複数のドイツ国内で経営者としての経験を持つ人々に話したところ、家族の扶養ビザの申請を通すための合法的なやり方はいくらでもある、かつ、当時の筆者の際の不足収入が月410€足らずであったなら、経営者がそれを補う方法を模索するべきだ、という意見を異口同音にもらった。

 そもそも、Josef Biffarは、「ご家族での応募歓迎」となぜ募集要項に書いたのか
 これは、筆者が直接、Josef Biffarのとある古参の幹部(仮称A)から聞いた話である。

 とかく従業員がよく変わる、すぐに辞めるのは飲食店の常ではあるが、人の非定着ぶり、言い換えれば入れ替わりの激しさで言えば、同社はその中でも指折りである。
 何せ、毎年、全正社員数とほぼ同じだけの人数が入っては辞めていくのである。
 理由は言わずもがな。

 さて、そうした中、もちろん採用活動にはそれなりの金と時間がかかる故、会社としてはやはりおいそれと簡単に辞めない人を欲していた。
 そこで、幹部Aが提案(※本人談)したのが、「家族持ちを雇おう」というアイディアだったのである。
 このアイディア自体はまったく問題がないし、むしろ人員の定着をはかるための常套手段とも言えるポピュラーなものだ。
 Josef Biffarが、ここで非常にユニークなのは、人材の定着を狙って「家族持ちを雇おう」とした一方で、「家族が暮らすための保証」をするつもりは一切無かったという点である。
 そもそも、どうすれば家族同伴でビザを取得し、ドイツで生活ができるのか、ということを調べてすらいなかった可能性が大である。
 というのも、ここでは詳しくは書かないが、家族同伴という条件で採用されたにもかかわらず家族のビザが発行されず、結果、同社を退職したのは、筆者だけではないからである。


 まさに、

だったら雇うなよ、最低保証くらいしろよ!

 と、声を大にして言いたい。