私がJosef Biffarから(不当)解雇告知を受けたのは、2018年10月12日の正午前であった。

 この日の前週、既に私の労働契約書に法的不備の疑いが発覚していたことと、別件についてもJosef Biffarとの信頼関係を根底から覆される事態にあり、弁護士事務所に相談している最中での出来事だった。
 弁護士事務所にアポイントメントを取っていたため、自宅を出る準備をしていた、その時。
 Josef Biffar社長から、「話があるので社長室に出頭するように」とのLINEメッセージがあった。既に担当の弁護士から、Josef Biffar社長と直接やり取りをするのはやめて、すべてのやり取りは弁護士を通すよう告知があったため、その旨を社長にも伝え、社長室には行かないこと、何か話があるなら弁護士を通してほしいことを伝えた。

 その直後、約10分後であろうか。自宅のドアを激しくノックする音が聞こえた。本能的に脅威を感じ、妊娠中でもあったため、私は死角に移動し、家族(A)がドアを開けた。

 するとそこには、一枚の社名レターヘッド付きA4用紙を手にした社長(T)が立っていた。

T:「ちょっと、これにサインをしてください」
A:「これは何ですか。ドイツ語なので内容がわかりません。内容がわからないものは受け取れません」
T:「いえ、内容はわからなくていいので、受け取ったというサインをしてください
A:「内容がわからないものは受け取れませんし、サインもできません。とにかく、ドイツ語でしか書かれていないので、今は受け取ることはできません」

 すると、社長は引き下がり、そのA4用紙を持ったまま立ち去った。
 私も家族も動揺し、混乱したが、とにかく約束の時間に弁護士事務所へ向かうため、気を取り直して再び準備をしていた。

 その約10分後、自宅ドアの外に人の気配がし、ドアで何かをしているような音がしたため、家族がドアを開ける。
 
 そこには、目を疑う状況があった。
 なんと、先ほど突き付けてきたドイツ語文書の紙を自宅ドアの外側に貼り付けて、その写真を撮っている社長がいた。


 家族が、「何やってるんですか?」と訊くと、社長の後方にはドイツ人男性社員が立っており、社長がいうには、

 「書類を受け取ったことの証拠写真を撮りました。彼は、その証人です」

 との事であった。

 以下の添付資料が、自宅ドア外側に貼り付けられたものである。

不当解雇通知

 さて、ここでいったん状況解説を中断して、以上に関する法的な点を述べたいと思う。

 まず、ドイツのみならず欧州においては、内容がわからなかろうと、自主的にサインしたものは、そこに書かれてあることを承諾したことになる。※但し、銃を突きつけられるなどして本人の意思に反して強制的にサインさせられたものは無効。

 本件の場合、私の家族が、「内容がわからないため」受領もサインも明白に拒否している。
 
 なお、受領やサイン(承諾)を拒否しているにもかかわらず、このように一方的に自宅へ押しかけてドアに張り付け、「書類を受け取った証拠」写真撮影をしても、法的効力は一切ないらしい。

 しかしながら、身体の大きな、ガタイのいいドイツ人男性社員を引き連れてのことであり、非常に脅威的であった。
 そもそも、直接のやり取りは控えて全てのやり取りは弁護士を通してほしい旨を伝えた直後の出来事である。

 あまりのことに、しばらく放心状態となり、家族に介抱されながら私が我に返った時、涙と動悸が止まらなくなっていた。

―【その2】に続く―