就労目的でドイツに渡る日本人も実に多種多様である。
 だから、すべての人に当てはまるわけではないが、これから仕事のため渡独しようとしているならば、駐在員など何かしらの強力な後ろ盾がある人でなければ、弁護士保険への加入を強く推奨する。

 私より以前に、ドイツで賃金未払い&残業代踏み倒しに遭い、訴訟に踏み切った先輩のブログでも弁護士保険の加入を強く勧めている。

 私自身、Josef Biffarの不当解雇や賃金未払いについて、複数の弁護士事務所に問い合わせたが、まず訊かれたのは、「弁護士保険に加入しているか?」だった。
 前書きでも述べたとおり、弁護士は、たとえ法的には被告側に非があることが明らかであっても、訴訟の結果、原告側に請求される裁判・弁護士費用などの諸経費が賠償額を上回る場合、「法的追及の価値無し」として、原告に訴訟を勧めない、または案件自体を拒否される。
 しかし、弁護士保険に加入していれば、弁護士費用には保険が適用されるため、自ずと賠償額がかなり少額であっても、弁護士が動いてくれるのである。

 私の場合、諸事情により、最初の訴訟(解雇制限訴訟)に踏み切った後で裁判および弁護士費用の事情が大幅に変化した
 そもそも私は、少しでも多くのお金をもらいたいから訴訟を起こそうとしたのではなく、Josef Biffarのやり方に全身の血が沸騰するほどの激しい憤りを覚え、それが不正であることを立証したかったからこその決断であった。言うまでもなく、大きな会社組織がせいぜい数万円程度の賠償金を支払うことになったところで、痛くも痒くもないのは重々承知していた。
 それでもなお、例え多額の身銭を切ってでも法廷で証明したかったのは、Josef Biffarと、Restaurant Fumiが法令違反を堂々としている組織であるということであった。それが叶うのであれば、最終的に裁判・弁護士費用が賠償額を上回っても構わないから告訴したい旨、弁護士事務所で力説した。
 しかしながら、彼らも慈善事業ではないため、

「悔しい気持ちは痛いほどよく分かるが、こんな人間のために、あなたの貴重な労力や時間、お金をこれ以上使う価値はない。あなたがそんなことをしなくても、このような人間にはいつか必ず報いがくる。あなたは、ドイツに来た本来の目的を見失わず、前向きに生きなさい」

などと説得され、解雇制限訴訟に続く労働裁判を取りやめにした。

 上でリンクを貼った先輩の事例も、弁護士保険未加入であったため、費用が賠償額を上回った時点で弁護士から和解(裁判終了)を推奨されたそうだ。しかし、もし仮に弁護士保険に加入していたなら、裁判費用や弁護士費用にかかわらず、とことん法廷で争うことが可能になる。

 ドイツ人でも弁護士保険に加入している人は少なくない。
 弁護士保険は各保険会社によって様々な契約があり、労働問題専門や、不動産トラブル限定、などのオプションも種々ある。しかし、どの保険も共通しているのは、「事が起こった後で加入しても保険適用されない」ことだ。
 雇用だけでなく、家の賃貸契約や隣人とのトラブル、交通事故など、ドイツでも他の国と同じく、様々なトラブルに見舞われる可能性がある。

 ということで、渡独したらまず先にすべきことの一つは、弁護士保険加入であると断言したい。