ドイツ・レストランFumi(ダイデスハイム)元スタッフ被害者の実録記

※ タイトル背景画像:社長自らが一方的に自宅まで押しかけ、ドア外側に張り付けた「不当解雇通知」。弁護士を通じて解雇制限訴訟に踏み切り、不当解雇撤回を勝ち取った。

 当ブログは、ドイツ西南部のダイデスハイム(Deidesheim)にある、ワイン醸造所Josef Biffar Wein & Sekt GmbH(ヨーゼフ・ビファー)および併設の和食レストラン・フミ(Restaurant Fumi)元従業員の実体験を綴るものである。

※ 当ブログの免責事項を必ずお読みください。

  あくまでもメンバーそれぞれ個人の実録記です。
  メッセージは歓迎しますが、法律相談は専門家にお願いいたします。

 当ブログの内容は、すべて過去に起こった出来事である。
 
 開設した主な目的は、過去の元従業員たちが体験したような、数々の辛い思いをする新たな日本人を一人でも少なくしたいためであるが、個人的には、過去の整理、そして過去との決別のためでもある。
 
 これを書いているのは2019年8月であり、ドイツでは夏休みだ。
 私が法的な扱いの上でJosef Biffarを退社したのは2019年6月30日である。休み明けからは新たなドイツ語コースと仕事が始まるため、それまでに一通り、過去を整理したい思いで、手元の書類整理も兼ねて記事を書いている。書くべきことを全て書き終えたら、以後、よほど何か起こらない限り更新することはない。

 2017年10月下旬に渡独してから、Josef Biffarで実際に実務にあたっていたのは実質一年弱であったが、そのわずか一年間に満たない期間にも実に様々な出来事があった。
 当ブログに投稿する記事はすべてJosef BiffarあるいはRestaurant Fumiとの間に起こったネガティブな出来事と、弁護士のアドバイス等を基にした関連する法的解釈、および、記事内容理解に必要な法律や諸制度の紹介と解説である。

 個人的に楽しかった思い出や、元同僚たちとの日頃の付き合い、地域の多くの親切な人たちとの出会い等、当ブログの趣旨に関連しないエピソードを綴ることはないが、ダイデスハイムという、日本では一般に聞き慣れないドイツの田舎町に身を置いたことそのものは貴重な体験となった。


 いつも支えてくれ、休日には一緒に楽しみ、子どもたちを可愛がってくれた元同僚たち。
 毎朝、子どもの通園・通学時には窓から「おはよう」と手を振ってくれ、クリスマスやイースター等、機会ある度に贈り物やお菓子をくれた近所の方々。
 私のたどたどしいドイツ語に辛抱強く付き合ってくれ、時には大きな勘違いをして迷惑をかけたが、寛大な対応をしてくれた幼稚園・小学校の先生方。
 週末に誘ってくれたり、買い物に付き合ってくれたり、ドイツ生活の相談に乗ってくれた幼稚園・小学校のクラスメートの親御さんたち。
 小さくなったお子さんの衣類や靴を定期的に持ってきてくれた、Josef Biffar隣のホテルにお勤めの女性。
 慣れないドイツ語やドイツ生活に慣れるべく、共に励まし合ったドイツ語コースのクラスメートたち。
 いつも温かく迎えてくれ、子どもたちにもお菓子をくれ、様々な相談にも乗ってくれた地域のワイナリー店主。
 予期せずして突然Josef Biffarを退社することになり、社宅退去が早まった際、「いつでも来て構わない」と言ってくれた大家さん。
 社宅退去となったとき、仕事に都合をつけて駆けつけてくれたご夫妻。
 
 
 こうして思い出してみると、窮地に追い込まれた時には必ず誰かが助けてくれた。
 実に多くの方々の手助けがあり、お陰で壮絶なドイツ初年度の数々の正念場を何とか乗り切ることができた。

 この場を借りて、すべての方に御礼申し上げたい。

 個別に記事を作るほどの事件ではないが、Josef Biffarの会社組織の内情と、社長らの性格や人柄をよく表すエピソードは、枚挙に暇がない。
 ここでは、何回かに分けて、それらのエピソードのいくつかを紹介する。
 (ほとんどすべてのエピソードは物証等が無い。あくまでも個々人の証言や実体験を元にして構成している。また、既に他の記事で紹介し、重複しているエピソードもある。)



その1_社長の性格・人柄編


● 2018年夏、2店舗閉店にあたり、リストラや急な異動で全社員が今後の生活や仕事の不安と混乱などに苛まれる最中、社長は日本に一時帰国して子どもたちと富士山登山し、その模様をドイツにいるスタッフに伝えたことで、全スタッフの間でその話が広まった。
(もちろんこの行為に違法性は一切ない。しかし、社員やその家族の心情などに配慮する気など毛頭無いことがわかる。)

● スタッフの賄いは一切禁止。日々の営業で余った仕込みや賞味期限切れの食材も全てゴミ箱に破棄しなければならない。閉店間際でさえ、余った料理のつまみ食いも禁止。なぜなら、ドイツでは賄いを出す場合、労働者は賄い費を店側に支払わなければならず、それにより最低賃金や税金の計算が変わる(単純に言えば、賄いを出すと経営者の出費が、ほんのわずかだが増える)。
 なお、海外求人情報を見ればわかるが、ドイツの日系飲食店でスタッフに賄いを出さない会社は他にほとんど見当たらない
 一方、社長自身は余ったメインディッシュをタッパーに詰めて持ち帰り、自宅で食べるからと、スタッフに命じて寿司を作らせ、これも一人で持ち帰る
(もちろん社長だから、この行為に違法性は一切ない。)

●「事務処理が間に合わなくて」残業代を支給してもらえないまま、帰国の途についた元スタッフがいた。

● 求人情報で「ご家族での応募歓迎」「幼稚園・小学校手続きやドイツ生活のサポートします」を見て応募し入社した家族連れ社員のいずれも、世帯収入が家族連れの規定を満たさないためにドイツ政府の公的扶助対象になったり、家族ビザ申請が却下されたり、一年以上仮ビザ状態で子供手当がもらえなかったりした。

● スタッフには、法律で定められている最低賃金(2018年11月当時で、時給9.23ユーロ)しか支払わない一方で、その勤務時間中は、自分の14歳(当時)の娘に、その時給をはるかに超えた時給12~14ユーロほどでベビーシッターを依頼するよう提案した。

● 家族ビザ申請が却下された際、社長から「会社では規定を満たすために給料を上げたり、追加の仕事を与えたり、弁護士に依頼するなど、一切の救済措置をしない」と言われたことに対し、改めて抗議すると、「私はできることをやっている。週明けに、Job Centerの知人に電話してあげようとしているのに、そんな文句を言われるなんて心外だ。そんなことを言ってくるなら、私はJob Centerに電話しないという選択もある」と恫喝してきた。(結局、電話したのかどうか知らないが、社長のほうからは何の報告もなし。なお、知人が別ルートからJob Centerに掛け合ってくれたが、滞在許可申請に関することはJob Centerの管轄外)

● 弁護士からの質問状に対して「届いていません、受け取っていません」とシラを切り、回答期限までに回答をよこさなかった。その後、弁護士から催促連絡と、再度回答期限を通告したところ、「ちゃんと法律に則った契約関係にあるので、質問に答える必要はない」との回答があったにもかかわらず、法律に則った給料の支払いがされなかった(賃金未払い)。

● 社長が40€で購入し、別の社員家族が一定期間使用した後で会社の倉庫に放置されていたベビーベッドを、買値と同じ40€で譲ると提案してきた。

● 社長も使う従業員用トイレのトイレットペーパーはスタッフ各自で用意せよとの御触れ有り。

● 辞めたスタッフが、既に引っ越しを済ませた後で最後の挨拶にと社長にアポを取り、わざわざ田舎町の会社に出向いて待機していたが、結局社長は現れず、携帯メッセージを送ると、「忘れてました、ごめんなさい、お元気で」との返信が届いて終了。

● 社長の発言:「私の娘は学年トップの成績です。母親がちゃんとしていれば、子どもたちは必ずついてきます。お宅のお子さんが騒がしいのは、お母さんがしっかりしていないからじゃないですか?」
(渡独直後、一方的に契約破棄されたことに抗議したところ、「あなたは精神病だから2~3週間入院したほうが良い。精神疾患のある人は雇えない」の直後の発言である。すべてにおいて自分が正しいと思い込んでいるがゆえ、仕事と関係のないことまで引き合いに出して否定の材料にする典型的なモラハラである。)

「家族がいて食えないようにしたのは誰なんだと。だったら雇うなよ。最低保証くらいしろよ。」

 関西の某大手芸能事務所の不祥事に対する、とあるコメディアンのコメントである。

 このコメント。
 まさに、このJosef Biffarに対しても当てはまる。

 Josef Biffarは、求人情報で「ご家族での応募歓迎」としておきながら、家族で移住しようとした社員に対して何の保証もせず、さらにはどうすれば家族同伴で移住できるかの下調べすらしていなかったと断言できよう。

 実際、家族同伴で渡航し、当然ながら家族とともにドイツ生活を送るつもりでいた社員に対して、Josef Biffarは以下のような扱いをした。

● Josef Biffarが支払う給料は、扶養家族がいる者にとっては、ドイツ政府が定める公的扶助(いわゆる生活保護のようなもの)の対象になるほど低かった。そのため、一般賃貸物件の申し込みや、訴訟のための弁護士費用・裁判費用などが一部または全額免除されるほどであった。

● 世帯収入が規定未満の場合、家族の滞在許可(ビザ)は発効されない。これの申請が却下された際、社長は、いともあっさり「ご家族は帰国されてはいかがですか」と提案した

● 後に、当時のそうした状況を複数のドイツ国内で経営者としての経験を持つ人々に話したところ、家族の扶養ビザの申請を通すための合法的なやり方はいくらでもある、かつ、当時の筆者の際の不足収入が月410€足らずであったなら、経営者がそれを補う方法を模索するべきだ、という意見を異口同音にもらった。

 そもそも、Josef Biffarは、「ご家族での応募歓迎」となぜ募集要項に書いたのか
 これは、筆者が直接、Josef Biffarのとある古参の幹部(仮称A)から聞いた話である。

 とかく従業員がよく変わる、すぐに辞めるのは飲食店の常ではあるが、人の非定着ぶり、言い換えれば入れ替わりの激しさで言えば、同社はその中でも指折りである。
 何せ、毎年、全正社員数とほぼ同じだけの人数が入っては辞めていくのである。
 理由は言わずもがな。

 さて、そうした中、もちろん採用活動にはそれなりの金と時間がかかる故、会社としてはやはりおいそれと簡単に辞めない人を欲していた。
 そこで、幹部Aが提案(※本人談)したのが、「家族持ちを雇おう」というアイディアだったのである。
 このアイディア自体はまったく問題がないし、むしろ人員の定着をはかるための常套手段とも言えるポピュラーなものだ。
 Josef Biffarが、ここで非常にユニークなのは、人材の定着を狙って「家族持ちを雇おう」とした一方で、「家族が暮らすための保証」をするつもりは一切無かったという点である。
 そもそも、どうすれば家族同伴でビザを取得し、ドイツで生活ができるのか、ということを調べてすらいなかった可能性が大である。
 というのも、ここでは詳しくは書かないが、家族同伴という条件で採用されたにもかかわらず家族のビザが発行されず、結果、同社を退職したのは、筆者だけではないからである。


 まさに、

だったら雇うなよ、最低保証くらいしろよ!

 と、声を大にして言いたい。

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